NENOiのブログ

ここに書いてある事は店主が感じた事、考えた事を記していますが大抵のことは既に先達が書いています

S社をそれを営業と呼ぶんだぜ?

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こんにちは、早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。

店主は間も無く3年を迎えるこのお店を始めるまで本屋はおろか出版業界にすら関わった事がありませんでした。その為、出版社が書店にする対応に驚きを禁じ得ない事柄がたくさんあります。
例えば、出版社さん、あるいは著者と相談して「イベントしましょう!」となった時の対応。

当店みたいな小規模な本屋は基本的に買切りで本を仕入れているのですが
「イベントの期間中(あるいは当日)本の販売をしたい。売り切れは避けたいけれど買切りで余ってしまうと困るから特別に委託でお願いしたい。」
というとなぜか取次(卸業者)を通して仕入れるよりもこちらに不利な条件で提示される。
自社の本に関連したイベントで折角の商機なのに条件を厳しくするって他業種経験者からすると「えっ?なんで?」ってなるのですけど…。しかも間に入ってた1社が減っているのに?!なんで?!(いまだに理解できない)

これよくある光景です。

そんな中、先日「なんだこれは?!」となった営業メールが来ました。以下いくつかぼかしたりしましたが概ね原文に忠実なメールの文面を記載します。

ー・ー・ー・ー・ー
NENOi 御中
突然のご連絡で失礼いたします。
出版社S社の営業部Mと申します。

この度はお問合せアドレスから大変失礼いたします。
近日、弊社より発売予定の『〇〇』の著者さんより、

本書を是非、貴店様にてご販売してほしい旨、お伝えするようにご依頼をいただきました。
本書は(以下書籍の内容説明)

著者本人のメッセージと写真、本書のご案内を添付させていただきます。
是非ともご展開をご検討ください。
尚、ご注文につきましてはお取引の取次店様へお願い申し上げます。この度は突然のご連絡にて大変失礼いたしました。
ー・ー・ー・ー・ー

著者のメッセージ(直筆画像をほぼそのまま記述しました)

ーーーメッセージここからーーー
はじめまして著者名です。
突然のお手紙失礼します。
某日に、私の初めての本「〇〇」がS社さんより出版されることなりました。
まだ行ったことはないんですが(ごめんなさい…!)
とても素敵な本屋さんだなぁと思い、
ぜひ、「〇〇」を置いて頂きたく
手紙を送らせてもらいました。
前向きにご検討を…よろしくお願いいたします。
コロナで大変な中ですが、何か私に、本屋さんを
盛りあげるお手伝いができるようでしたら
ぜひご協力させて下さい。

お忙しいところ失礼しました…!
よろしくお願いいたします!!

著者名(サイン)
ーーーメッセージここまでーーー

来店した事なく、SNSなどでもフォローされている様子もない著者から「素敵」と言われるのは隠しても隠しきれない魅力がある当店なのでそれはわかりますが「NENOiさんへ」などもなくあからさまに使い回しのきくメッセージ。著者の方が是非販売して欲しいと願った書店は何店舗くらいあるのでしょうね。
それでも!それでも初の著作である(らしい)本を著者は売りたいだろうと思うのです、その為に出来る事はなんでもしようと思ったのでしょう。だからこのメッセージについてはまだわからないでもないのです。

けどこのメール、営業は売りたいと思ってないよね?
直筆メッセージなどの素材もあるのに「著者が置いて欲しいと言ったから送りました」だけ。以下ここがダメだよこの営業さん!

・突然のご連絡?
 この出版社さん、今まで接点が全くなかったわけではなく、メールを送ってきた方とは別の方ですが営業の方ともやり取りした事あります。名刺も交換しています。
 それだけでなく今年の2月にこの出版社の書籍のイベントもやっています。イベントについてはこの出版社のHPでもしっかり告知されています。
(ちなみにその時にやり取りした営業さんは冒頭に書いたような条件提示に始まり、その後の対応もひどく、正直すごく嫌な思いをしました。)
社員20名規模、営業は5名くらいだと想像しますが、そこでの情報共有もないのか、そもそも当店みたいな小さいところは眼中にないのか「突然のご連絡で」送ってくる軽率さ。
著者さんが「是非販売して欲しい」と思っている書店に対する配慮ゼロ。思ってないよ、全然思ってないよ、これじゃあ。

問い合わせのメールアドレス調べる事できるならついでにHPのニュースとか見てみるとか、せめて自社のHPに記載のあるイベント履歴を調べるくらいしよ?2月以降とかコロナの関係もあってイベントなんて減ってたでしょ?ログたどるだけでもそこまで遡らないで済むんじゃないの?

・ご注文、販促は?
 肝心の注文に関しても「うちじゃない、取次へ」とにべも無い。それどころか販促用のPOPとかサイン本とかの提案もなし。
著者も「本屋さんを盛り上げる手伝いができたら協力したい」と書いているのにそこを補強せず、それどころか「やはりこれ社交辞令ね。」となる簡潔さ。
「イベントなどはまだしにくい時期ではありますが、販促に何かできる事があればお気軽ご相談ください」
とか書けばまた違ったのに。
この会社の営業の仕事は「本を売る」ではないのかな?

・なんで普通の新刊案内しなかったの?
 やり取りをした事ある出版社さんからは新刊の案内をメールでもらう事があります。普通に「来月の新刊です!」みたいな案内です。
そういう感じに「著者から本屋さんへのエールのメッセージももらいました」とか書けば「ご注文も取次に。」で普通に案内できたのではと思います。
なのに、「著者が特に希望した」と言うよくわからない書き振り。

店主は存じ上げなかったのですが著者の方を調べてみると職業柄よく顔を出されているだけあって綺麗な方でした。そのせいかメールには彼女がメッセージを手に持ち、後ろには出版社のロゴが見えるような写真も添付されていました。
2月にうちでイベントした書籍は著者が男性だからかそんな写真一切なかったと思うのですが、「綺麗な女性が書いているから外見もアピールポイントにしよう!」という発想がどうにも昭和で正直気持ち悪いなと思いました。
綺麗な女性に「ぜひ置いて」って言われたらみんな置きたくなりますよね!とでも思ったのでしょうか?

流石に他の出版社さんでこういうのはみた事ないのですが、でもうち規模には別に営業がそもそも来ないなんてザラなので何がスタンダートなのかは正直よくわかりません(不思議なことに人がたくさんいる大手より、1人とかでやられている出版社さんとかの方が訪問してくださる事が多い気がします)。

この出版社の本は個人的に好きなものが多いのですが、ここの営業は好きじゃないです。「営業は会社の顔」って言いますけど、この会社の2名の営業のおかげであまり積極的にこの会社の本を置きたくないなと思ってます。

なお著者の方はどうやら店主と同じ高校出身みたいなので応援してますので、頑張ってください。

今日のBGM 『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ。』(サンボマスター