NENOiのブログ

ここに書いてある事は店主が感じた事、考えた事を記していますが大抵のことは既に先達が書いています

親知らず

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桃子はずっと切り出せずにいたその言葉をついに白田に告げた。
「もう終わりにしたい」と。それを聞いた白田は怒り狂い、そして叫んだ。
「なんでだよ!ずっと一緒にいたじゃないか!なんでいまさら俺を捨てようとする!」
白田は部屋のあちこちを叩きながら桃子に詰め寄った。
「もうだめなの、、、あなたのことを嫌いになったわけではないのよ。でも、このままずるずると行っていたら確実に私、もたなくなっちゃうの。あなたに叩かれ続ける日々に、体がもたなくなっちゃうのよ!お願いだからもう私を自由にして!!」
桃子の叫びもむなしく白田は桃子の顔を殴り、そして組み伏せて覆いかぶさってきた。そのとき、急に白田の体から力抜け崩れ落ちた。
「も、ももこ、、、お前いったい、な、なにを、、、し、、、た、、、」
薄れ行く意識の中で白田は桃子の手に注射器のようなものが握られているのを目にした。そして、涙交じりの桃子の声が「ごめんね、白ちゃん」と言っていたのを確かに聞いて、白田は「泣かせるつもりじゃなかったんだけどな」とまで思った。
そこで白田の思考の一切はとまった。白田が意識を失ったのを確認した桃子はやおら立ち上がり、静かに白田を引き剥がし、そして袋に詰めた。
家に帰ったあと、一人になった部屋で桃子はその日抜いた親知らずのあった箇所を触ってみた。こめかみあたりにズキンと痛みが走った。

 

こんにちは。早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。

のっけからこれは一体なんの話しかって?これは以前親知らずを抜いた日に書いたお話です。せっかくなのでその日にしたことを覚えておこうと記録として書いてたのでネタに詰まってせっかくなので載せてみることにしました。

以下読み替え。

歯茎の腫れは進み、それまでずっと切り出せずにいた僕はついに歯医者の予約の電話をした。「親知らずを抜きたい」と。
それを言った後で親知らずが気になってばかりいた僕は口を意味もなく開けたり閉めたりしては頬の内側を傷つけ、顔をしかめていた。
8020運動とかあるし、歯はできるだけ残しておきたかったから、なるべくなら抜きたくなかったのだけど、だんだんと痛くなってくるし、歯ブラシでも届かないし、虫歯になんかなってしまったりしたら最悪だし、このままずるずる放置しておけば絶対にまずいことになる。
そこで歯医者さんは抜く前に麻酔をして、麻酔が効いているのを確認した後でゴリゴリと(ペンチか何かで)僕の歯を抜いて、その歯を歯医者さん頼んで袋に入れてもって帰ってきた。
家に帰ったあと、一人になった部屋でさっきまで親知らずのあった箇所を触ってみた。するとこめかみあたりにズキンとに痛みが走った。

ね?

 

それにしても麻酔されている最中の「今確実にめりめりと抜かれ歯と肉が離されていくのがわかるのに痛みがまったくない」という感覚は実に奇妙なものですね。

 

これ2008年頃に書いてたようです。ずいぶん昔だなぁ。