NENOiのブログ

ここに書いてある事は店主が感じた事、考えた事を記していますが大抵のことは既に先達が書いています

S社をそれを営業と呼ぶんだぜ?

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こんにちは、早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。

店主は間も無く3年を迎えるこのお店を始めるまで本屋はおろか出版業界にすら関わった事がありませんでした。その為、出版社が書店にする対応に驚きを禁じ得ない事柄がたくさんあります。
例えば、出版社さん、あるいは著者と相談して「イベントしましょう!」となった時の対応。

当店みたいな小規模な本屋は基本的に買切りで本を仕入れているのですが
「イベントの期間中(あるいは当日)本の販売をしたい。売り切れは避けたいけれど買切りで余ってしまうと困るから特別に委託でお願いしたい。」
というとなぜか取次(卸業者)を通して仕入れるよりもこちらに不利な条件で提示される。
自社の本に関連したイベントで折角の商機なのに条件を厳しくするって他業種経験者からすると「えっ?なんで?」ってなるのですけど…。しかも間に入ってた1社が減っているのに?!なんで?!(いまだに理解できない)

これよくある光景です。

そんな中、先日「なんだこれは?!」となった営業メールが来ました。以下いくつかぼかしたりしましたが概ね原文に忠実なメールの文面を記載します。

ー・ー・ー・ー・ー
NENOi 御中
突然のご連絡で失礼いたします。
出版社S社の営業部Mと申します。

この度はお問合せアドレスから大変失礼いたします。
近日、弊社より発売予定の『〇〇』の著者さんより、

本書を是非、貴店様にてご販売してほしい旨、お伝えするようにご依頼をいただきました。
本書は(以下書籍の内容説明)

著者本人のメッセージと写真、本書のご案内を添付させていただきます。
是非ともご展開をご検討ください。
尚、ご注文につきましてはお取引の取次店様へお願い申し上げます。この度は突然のご連絡にて大変失礼いたしました。
ー・ー・ー・ー・ー

著者のメッセージ(直筆画像をほぼそのまま記述しました)

ーーーメッセージここからーーー
はじめまして著者名です。
突然のお手紙失礼します。
某日に、私の初めての本「〇〇」がS社さんより出版されることなりました。
まだ行ったことはないんですが(ごめんなさい…!)
とても素敵な本屋さんだなぁと思い、
ぜひ、「〇〇」を置いて頂きたく
手紙を送らせてもらいました。
前向きにご検討を…よろしくお願いいたします。
コロナで大変な中ですが、何か私に、本屋さんを
盛りあげるお手伝いができるようでしたら
ぜひご協力させて下さい。

お忙しいところ失礼しました…!
よろしくお願いいたします!!

著者名(サイン)
ーーーメッセージここまでーーー

来店した事なく、SNSなどでもフォローされている様子もない著者から「素敵」と言われるのは隠しても隠しきれない魅力がある当店なのでそれはわかりますが「NENOiさんへ」などもなくあからさまに使い回しのきくメッセージ。著者の方が是非販売して欲しいと願った書店は何店舗くらいあるのでしょうね。
それでも!それでも初の著作である(らしい)本を著者は売りたいだろうと思うのです、その為に出来る事はなんでもしようと思ったのでしょう。だからこのメッセージについてはまだわからないでもないのです。

けどこのメール、営業は売りたいと思ってないよね?
直筆メッセージなどの素材もあるのに「著者が置いて欲しいと言ったから送りました」だけ。以下ここがダメだよこの営業さん!

・突然のご連絡?
 この出版社さん、今まで接点が全くなかったわけではなく、メールを送ってきた方とは別の方ですが営業の方ともやり取りした事あります。名刺も交換しています。
 それだけでなく今年の2月にこの出版社の書籍のイベントもやっています。イベントについてはこの出版社のHPでもしっかり告知されています。
(ちなみにその時にやり取りした営業さんは冒頭に書いたような条件提示に始まり、その後の対応もひどく、正直すごく嫌な思いをしました。)
社員20名規模、営業は5名くらいだと想像しますが、そこでの情報共有もないのか、そもそも当店みたいな小さいところは眼中にないのか「突然のご連絡で」送ってくる軽率さ。
著者さんが「是非販売して欲しい」と思っている書店に対する配慮ゼロ。思ってないよ、全然思ってないよ、これじゃあ。

問い合わせのメールアドレス調べる事できるならついでにHPのニュースとか見てみるとか、せめて自社のHPに記載のあるイベント履歴を調べるくらいしよ?2月以降とかコロナの関係もあってイベントなんて減ってたでしょ?ログたどるだけでもそこまで遡らないで済むんじゃないの?

・ご注文、販促は?
 肝心の注文に関しても「うちじゃない、取次へ」とにべも無い。それどころか販促用のPOPとかサイン本とかの提案もなし。
著者も「本屋さんを盛り上げる手伝いができたら協力したい」と書いているのにそこを補強せず、それどころか「やはりこれ社交辞令ね。」となる簡潔さ。
「イベントなどはまだしにくい時期ではありますが、販促に何かできる事があればお気軽ご相談ください」
とか書けばまた違ったのに。
この会社の営業の仕事は「本を売る」ではないのかな?

・なんで普通の新刊案内しなかったの?
 やり取りをした事ある出版社さんからは新刊の案内をメールでもらう事があります。普通に「来月の新刊です!」みたいな案内です。
そういう感じに「著者から本屋さんへのエールのメッセージももらいました」とか書けば「ご注文も取次に。」で普通に案内できたのではと思います。
なのに、「著者が特に希望した」と言うよくわからない書き振り。

店主は存じ上げなかったのですが著者の方を調べてみると職業柄よく顔を出されているだけあって綺麗な方でした。そのせいかメールには彼女がメッセージを手に持ち、後ろには出版社のロゴが見えるような写真も添付されていました。
2月にうちでイベントした書籍は著者が男性だからかそんな写真一切なかったと思うのですが、「綺麗な女性が書いているから外見もアピールポイントにしよう!」という発想がどうにも昭和で正直気持ち悪いなと思いました。
綺麗な女性に「ぜひ置いて」って言われたらみんな置きたくなりますよね!とでも思ったのでしょうか?

流石に他の出版社さんでこういうのはみた事ないのですが、でもうち規模には別に営業がそもそも来ないなんてザラなので何がスタンダートなのかは正直よくわかりません(不思議なことに人がたくさんいる大手より、1人とかでやられている出版社さんとかの方が訪問してくださる事が多い気がします)。

この出版社の本は個人的に好きなものが多いのですが、ここの営業は好きじゃないです。「営業は会社の顔」って言いますけど、この会社の2名の営業のおかげであまり積極的にこの会社の本を置きたくないなと思ってます。

なお著者の方はどうやら店主と同じ高校出身みたいなので応援してますので、頑張ってください。

今日のBGM 『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ。』(サンボマスター

イトウくん

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こんにちは、早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。

店主の高校の同級生にイトウ君という人がいました。なんでカタカナかというと「伊藤」なのか「伊東」なの「井藤」なのかも覚えていないからです。彼は店主のクラスメイトと仲良く、その関係で時折話したりする程度の仲でした。正直おっぱい大好きな人という記憶しかなく顔もおぼろげにしか覚えていない人です。
けれどその彼は店主の生き方に大きな影響を与えている人なのです。

学校の課外授業の帰りだったのか学校の外(多分吉祥寺)で彼とバッタリ鉢合わせた事があります。それは信号のある横断歩道でした。
「車も来ないし、赤だけど渡ろうかな」と思ったのですがイトウ君は渡る素振りもないしどうしようかなと思っていた矢先、対岸の人が渡りました。その時ポツリと
「小さい子がいる時は信号守って欲しいな」
と呟くのが聞こえました。
気になって「どういう事?」と聞いてみたら
「最近原チャの免許取ったから実感するけど、小さい子はまだ自分で安全かどうかの判断が十分じゃないから信号が赤の時はちゃんと止まってて欲しい。けれど大人が守ってないのを見れば”赤信号は別に守らなくてもいいんだ”と思ってしまう。僕も別に赤信号で渡る時あるけど、小さい子がいる時はちゃんと止まってて欲しいんだ。」
普段おっぱいのことしか喋らないヘラヘラした感じの人だっただけに、正直このしっかりとした意見にびっくりした記憶がありますが、それ以来店主は小さな子がいる時はどんなに車通りがなくても信号を守るようになりました。そして彼の言葉は自分が子供の親となってよりそうだなと思うようになりました。

「小さい子が近くにいる時は車が通ってなくても横断歩道が赤ならちゃんと待つ」

この行動で、世界を革新するような何かがもたらされるわけでもないですが、彼の言葉は確かに僕の生き方を変えました。

最近、UberEatsの自転車マナーの悪さとかがよくニュースになるけれど、あの人たちに限らずマナー悪い人たちは多いよね。とふと思ったので書いてみました。秋の交通安全週間だし。
あとああいうマナーの悪い人たち、(歩行者、自転車、バイク、ドライバー問わず)周りがちゃんと避けたり、察してるからことなきを得ているだけだとと言う事を早く気づいた方がいいですよ。

なかなか更新できなくてすみません。あれ書こう、これ書こうと思う事はあれどなかなかうまく文章にする事ができず(ある程度書いてもまったく面白くないんですよ。困ったことに)、ズルズルと。。。今回も書いては消して書いては消して、、、。

 

夏に向かいつつある場所で冬に向かいつつある場所のことを思うこと

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こんにちは、早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。

先日、Instagramで紅葉した落ち葉の写真を見かけました。あれ?こんな時期に紅葉した落ち葉?と一瞬思いましたが、それはオーストラリアに住んでいる友人の投稿でした。

店主はかれこれもう7年くらい前になりますが、10年勤めた会社を辞めた後、3ヶ月ほどオーストラリアのメルボルンという街に滞在した事があります。
メルボルンにした理由は単純にオーストラリア大陸にまだ上陸したことがなかったから(そういえば四国もまだない)。
なので、南半球=南国、ゴールドコーストグレートバリアリーフ!くらいのイメージしかなく上着などもパーカー1着とかそんな程度でした。
9月のメルボルンは寒かった。。。

南半球と北半球では季節の巡りや、水が流れる際に発生する渦の巻き方が逆になることなど「事実」として知っていても実際に体験することではまた違うことを実感した出来事でしたが、その紅葉した落ち葉の写真はそんな体験を呼び起こしてくれました。

『旅する木』という店主が大好きな本があります。アラスカに魅せられアラスカの風景、情景を撮り続けた写真家星野道夫さんのエッセイなのですが、その中に「もうひとつの時間」というタイトルのお話があります。
その中にアラスカでホエールウォッチングに参加した人のエピソードがあります。そこで彼女はクジラの大ジャンプを目にします。その出来事からずっと後に、その時の事を「行って良かった事」として星野さんに語るくだりがあります。その中にとても印象的な言葉があります。

「(略)私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知ったこと…(略)」

店主はアラスカのクジラの大ジャンプを見たことはありませんが、「もうひとつの時間」があるという事を自分の身体に染み込ませる事ができたのはその3ヶ月なのかも知れないと思いました。

『旅する木』とてもいい本なのでぜひ読んでみてください。文庫なので値段もお手頃です。(当店にも在庫あります!)

 

nenoi.jp


あと、メルボルンもとてもいいところなのでコロナが落ち着いたらみんな行ってみるといいですよ。行く際のガイドには下記の本がおすすめです。

 

nenoi.jp

 

本当は先月末くらいに書き出していたのですが、どうにも書きすぎたり、うまくまとまらずほぼ夏になってからの投稿になってしまいました。すみません。

後、書きながら気付いたのですが「機動戦士ガンダム」でオーストラリアはブリティッシュ作戦コロニー落とし)によってシドニーは無くなってしまっているのですが「ポケットの中の戦争」でバーニィが「シドニーは今頃雪だなろうな」って話して「シドニーは今は夏だ!」ってバレてしまうけど、そもそも無くなっているのにそんなツッコミ入れながら「この潜入者め!」みたいな感じで襲い掛かりますかね?
ほんとどうでもいい余談でした。(ハイゴックかっこいいよ、ハイゴック)

 

休業に至る病。或いは当店が休業を決めた理由。

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こんにちは、早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。

一ヶ月に一回はnoteを更新していきたいと書いてきたのですがだいぶ間が空いてしまってすみません。

いくつか記事を書き出してはいたのですが、書いている途中から愚痴の様な怒りの様な話になってしまい、かつ面白くないというものにばかりなって全然公開できていませんでした。

今回もそんなに楽しい話にはならないと思ってはいるのですが、当初できる限り開けておきたいと考えていた当店が今なんで休業しているかについて一度ご説明しておいた方がいいのではと思っていましたのでこの駄文をつらつらと書いています。

上記にもあります通り、現在店舗は休業しています。
しかしながら四月七日の時点では出来る限り開けておくつもりでした。その日のツイートでは下記の様な投稿しておりました。

 

 

ちょうど、この時期位から新型コロナに新生児が感染したという報道や二十代の若者なども重症化する事例が報告され始めてきました。

当初言われてたような「重症化するのは六十代以降」というものではないと認識を改める事になりました。

もはや誰もがかかってもおかしくなく、また同時に誰もが重症になってしまう可能性があるウィルスの感染場所になるのは避けたいという気持ちが強く出てきました。

 

ただ一方でお店を初めて三年目、ようやく黒字(ただし人件費はないものとする)になり始めてきた矢先の事態で、グズグスとしながらモヤモヤと過ごしていました。

 

そんな最中に東京都から休業協力金の案内が出てきました。申請できるか五分五分ではと思いながらも最終的にはこれが決定打になり、休業する事を決めました。

協力金は一回限りでこれでは当店にとっては一ヶ月分位がせいぜいで何ヶ月も持つものではありません。
家賃がもっと高いお店や従業員のいるお店などでは話にならないレベルの金額だと思いますので休業しないお店もよくわかります。

また、外に出る事を抑制するというなら業種を限定するのではなく休業を決めたお店全てに支給しないと効果は中途半端なのではという疑念もあります。

 

幸いうちの子どもを預けている新宿区の保育園は休園はしていないのですが、親がテレワークを中心となっていて子供でも重症化する可能性がある中、子供だけが普通に通わせ続けるのは無理だという判断も休業を決める際の要因にありました。

 

当店よりも長く書店を経営され、また最近までお店を開けていた谷中のひるねこブックスさんの記事にもありましたが、店主も休業を決める少し前の時期、毎日お店を開けるかどうするかと頭を悩ましていました。そんなある雨の日、子供を保育園に連れて行くため電車を利用した際、ソーシャルディスタンスも気を払う素振りもなく多くの人が電車を利用して乗り換えのコンコースのエスカレーターですぐ後ろに立ったり、脇を駆け抜けていったり…。

 

マスクをする事が必ずしも予防には有用ではないとわかってはいるものの、マスクせずに近くに来る人や貴重なマスクを汚したくないのか、くしゃみする瞬間にマスクをずらす人などにいちいち心が、感情が揺れ動く自分のストレスに近いうち限界がくるなとも感じていました。

 

新刊も多く扱っているので日々仕入れもしていますし、ありがたい事に休業前に古本が来たりしていました。
その度に「お店開けたいなぁ」と素直に思います。


でも、どこもかしこもピリピリとストレスを溜め込んでギスギスしている人たちの中でお店を開けて自分がニコッと笑っていられるか自信がありません。

 

まるで整理されていない書き殴った様なまとまりのない文章ですが、こんな風にごちゃごちゃとすっちゃかめっちゃかな気持ちでこの休業期間を過ごしています。

確か『海辺のカフカ』に出てきた言葉だったのではないかと記憶していますが「絶望には底がない」という言葉。正直ここ最近はこの言葉を実感する事が多いです。

 

それでも三年目という事でこれまでの二年間に育んできたネノラーとの交流に今は本当に助けられている事が多く、心に燈が灯る日々でもあります。

 

 

この世界の片隅でI(アイ)と叫ぶ

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こんにちは。
早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。

 当店では毎月Running & Book (& Beer)という本屋なのに走るイベントを開催しています。ありがたい事に雨で開催できなかった日を除き、参加してくれる方が必ずおり、なぜか女性の方の参加率が高いに傾向あります。

 先日、普段から夜にも走るという女性の方が参加された時のお話が余りにも予想外で衝撃的でした。店主が
「夜も走るんですね。店主の妻は『夜は怖い』とまず一人では走りませんよ。」
と話しかけるとその方は
「大丈夫ですよ。いざとなったら逃げ込める場所を5箇所くらい用意してますから」(ト笑顔)
 店主としては「夜走るのは気持ちいいですよね。」みたいな言葉を想定していただけにあまりにも予想外のコメントに走りながら固まってしまいました。

 少し聞いてみるとやはり少し賑やかな場所とか走っていると、酔っ払いを中心に声をかけられる事があるとのこと。
 対して店主は夜に走っても、一度も「いざとなったら逃げ込める場所」とか考えた事なかった事に気づきました。
 店主が過去に遭遇した事があるのは道に迷ったと思しき警官に「〇〇ってこっち方面ですか?」と道を聞かれた事と、オリンピックイヤーでもないのに井の頭公園の酔っ払いに「オリンピック出るのか?」と声かけられたくらいで、身の危険とかを感じた事もありませんでした。
 それだけに、夜に走る行為一つで男性と女性という、ただそれだけでこんなにも違うのかとしばらく呆然となりました。

 それで思い出したのですが、大学生の頃、友人数人で飲んでいた時、その内の一人の携帯電話に着信がありました。友人はその電話に出て、しばらく電話の向こうの人物と話していました。時折、耳に入ってくるやり取りは特に緊急性を感じるものではなく、何故電話を続けているんだろう?と訝しんでいたところ「あっ自宅着いた?おっけーじゃあ電話切るわ。」という一言で唐突に電話は終わりました。
 後で聞いたところ、夜に犬の散歩に出ていた妹から電話だったそうです。「通話状態にしておけば何かあった時にすぐにわかるから」というのがその時の電話の理由で、その当時はそういうもんかね、と聞き流していたのですが、今ならその電話も意味もよくわかります。

 なんでこんな事を書いているかというと先月の記事ですが北海道は札幌に”かの書房”という本屋があり、そこの店主さんがブログで下記の様な事を書いていました。

踏み込んで私生活を聞いてくる初対面の方が増えたことが一番大きな負担になっているのです。
「彼氏はいるのか」「結婚してるのか」などを聞いて来られる男性、初対面で実家の住所を聞き出そうとする方などもいらっしゃいました。
そのため、初めてご来店される方々に必要以上に警戒心を抱いてしまいます。
はっきりと恐怖を抱いたのは、年が変わるすこし前のことでした。
店を閉めた直後から、自宅までつけてこようとする方がいらっしゃいました。
お客様かどうかはわかりませんし、途中、コンビニに逃れたので、私に何か被害があった訳ではありません。

(かの書房がゆく!2020/1/9 の記事より)
https://kano-syobo.hatenablog.com/entry/2020/01/09/120612

 店主は上記のランニングの時の事があったので「やっぱりそうなのか」という気持ちでした。女性一人だとそこに付け込まれるのかと。
 同時に悔しい気持ちにもなりました。お店を始めたいと思った人がただ女性というだけで、阻害されてしまうのかと。

 Twitterでも多くの女性が痴漢にあったり、危ない目にあったりしている「日常」を投稿しています。つい先日も大阪の中津駅で女性が痴漢されたのち、襲われたという事件の報道がありました

 最近では「フェミニズム」という言葉よりもともすれば「ポスト・フェミニズム」という言葉の方がよく見かける様に思います。
ポスト・フェミニズムという概念がある事はなんらおかしい事ではないし、理解もできます。けれど今の日本においてはまだまだ「ポスト(達成された過去)」として語る前に「プレゼント(現在)」を見て語るべきなのではないかと感じます。

 フェミニズムは、多くの人がご存知の通り女性の権利を求める思想ですが、目指している場所は「男女平等」です。ただ徒に権利を求めているわけではないのです。

 ローザ・パークスが白人専用と書かれたバスの席に座りたかったから、座ったのと同様に女性だって、一人で安全にお店を開きたいし、夜に走りたい。
痴漢されても泣き寝入りで、声をあげたら「された方にも問題があるのだ」なんて言われたくない。

 もっと言えば、男性だから女性だからとか変なジェンターロールや人種、国籍さえも超えて「「わたし、I(アイ)」は私である」とどんな人でも言えないと環境は悲しいと店主は思います。もちろんそのバックグランドに自身が人種や性別、国籍に誇りを持つことは何もおかしいことではないですし、両立する事柄だと思います。

 そこに求められるのはシンプルに「他者への敬意」を持つことだと思うのですがどうでしょうか?

 何だか色々書いた割には単純な事しか書いてないですが、単純である事と、簡単にできる事は同じではないですし、またする事が複雑になると何をすればいいのかがわからなくなります。
(「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」が「42」であるのと似てますね。。。。似てませんね。。。)

日本財団が行っている最新の18歳意識調査では日本は残念ながら下記のように将来に前向きではないという結果が出ています。

「将来の夢を持っている」、「国に解決したい社会課題がある」との回答も他国に比べ30%近く低い数字となっています。さらに「自分で国や社会を変えられると思う」人は5人に1人、残る8カ国で最も低い韓国の半数以下にとどまり、国の将来像に関しても「良くなる」という答えはトップの中国(96.2%)の10分の1。全体に途上国、欧米先進国のいずれと比べても数字の低さが際立つ調査結果となっています。

日本財団「18歳意識調査」第20回 テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査)より)
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2019/20191130-38555.html

 店主は少なくとも女性がもっと暮らしやすい国になれば、この意識もだいぶ改善されるんじゃないかなぁと思っています。
 それだけでだいぶ変わるのならと思うとちょっとワクワクしてきませんか?やっぱり「男も女もみんなフェミニストでなきゃ」!

何度でもノーヘイトと歌え

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あけましておめでとうございます。
早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。2020年もどうぞよろしくお願い致します。

新年最初の投稿だと言うのに、今回は恥を忍んでの告白めいたお話になり、やや気が重いです(今でも公開しようかまだ悩んでます)。

店主はいわゆるヘイトスピーチに代表されるような差別的な言動にはスルーではなく反対の声をあげるようしたいと最近思っています。

以前は「〇〇は民族として頭がおかしい」や「〇〇はNHKを支配している」などの言葉はあまりにも馬鹿げていたので、読むにも値しないとある意味冷笑的な高みに立ち、無視していました。

しかし、それらの悪意ある差別の言葉達が、ひた、ひたっと赤ワインに赤インキを一滴ずつ混ぜ込むように静かに深く染み込んでいっていたことに気づきもしませんでした。

店主には所謂、在日朝鮮人の友人が複数人います。ハングルを解する人もいれば、自分らの世代はハングルはわからないと言う人も、それぞれ性格もバラバラです。共通点といえば「店主と友人」である事くらい。

ある日、その中の一人と会っていた時に、店主にとって少し意外な行動をその人がとりました。余りにも些細な事すぎて何を具体的にしたのか覚えていないくらい些細な事でした。その時

 

「あぁ在日だからかな」

 

と唐突に心の中でそんな言葉が湧いて出てきました。余りにも自然に出てきたので、その場で呆然となってしまい、その後どんなやり取りをしたのかよく覚えていないくらいです。

 

心底怖い

 

と思いました。自分でも思いもしないような言葉が自らの内から湧き上がっていた事実に心底怯えました。その友人のみならず友人全てに申し訳ないと思いました。Twitterまとめサイトなどで日々溢れているそれらの言葉は名もなき毒のように日常の中に染み込んできて、気づかぬうちに店主の内面を食い荒らしていたのです。その事に気づいた瞬間店主は愕然とし、我が身を恥じました。

店主の場合は友人達と、また旅行先などで会った韓国の人たちの思い出がそれを「毒」であるとわからせてくれますが、それがなければ知らぬ間に飲み込まれてしまってたのではないかと真剣に思います。

在日や韓国の人へのヘイトに限らず、その他の海外の人や、時にはハーフの人への嫌がらせやいじめもよく耳にしますし、実際に当事者から聞いた事もあります。

店主には保育園に通う子供がいます。その保育園ではハーフの子がいます。子供達はその子がハーフかどうかなど全く気にせずに遊んでいます。彼ら、彼女らは国籍、人種なんて全く気にしません。

もし、その年齢で何かあるとすればそれば親からの影響に過ぎないと思います。でも同時に子供の頃に染み込んでしまったものってそう簡単に拭えるのだろうかと思うと、子供と一緒にいる事の重大さに時として立ちすくんでしうまう事があります。

近年では何かを調べようするとき「ググる」事から始めるのが普通だと思いますが、例えば「韓国 歴史」とキーワードを入れて検索すると出てくる情報をみても明らかなように、デタラメと悪意にまみれたサイトがたくさん出てきてしまいます。もしそれらを読んで「事実」だと思ってしまったら?

別に正義感とかそういう事ではなく、ただひたすらに我が身とその手を伸ばして届くようなささやかな範囲の人たちを守りたいというエゴのみで、その汚いヘイトや嘘を無くしていきたいと思う次第です。


2020年は既に毒の回ったこの体をいかにデトックスしていき、同時にヘイトにはヘイトだと言い続けていくかを課題と目標の一つにしたいと思っています。
また、自分の眼差しが常に正しいわけではないという意識も持つ続けていきたいと思います。ナルケマレバンガカピカッピ。

タカシくん

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またやっちまった。
3本目のタバコに火を付けながらタカシは思った。
タカシは今年3件目となる職場の中華料理屋で、コック長(つまり店長)と喧嘩して店を飛び出したばかりだった。

どうしていつもこうなっちまうんだろう?
俺だって一生懸命にやっているのに。
どこにいっても、結局ゴタゴタを引き起こしちまうんだ。

良くないことは続くもので、落ち込んだりしたとき自然と足が向いてしまう多摩川もタイミングの悪い事に今日は日曜でBBQやら乗馬体験会などで騒々しかった。
タカシは自分とは関係ないところで展開されているそれら喧騒をどこ見るとなしに眺めていたが、それらが本当に自分と全く関係してない事に突然のように気づいて、まるで自分が社会から無視された存在のように感じた。

まるで俺は社会から無視された、虫。

などど愚にもつかない駄洒落が思い浮かんではさらに落ち込んでしまう始末。
当然元気になるはずもない。

途中コンビニで買った水も既になく、余りのまずさで途中で食べるのをやめたコンビニ弁当の残りが初夏の日差しで温められたせいで、もあっとビニール袋から臭ってきて、タカシはさらにげんなりした。

何やってんだろうな俺。

とそこへ突然携帯電話が振動し、着信を知らせる。
ハッと我に返りタカシは慌てて電話に出た。

「タダシか?」

店長だった。タカシは着信先を見ないで電話に出た事を後悔した。

「・・・・いや違います。タカシです。」
「!!・・・・そうだった。タカシ、どこで油を売っているんだ。もう仕込みの時間だぞ。とっとと戻って来い。」

店長の余りの意外な言葉にタカシはしばらく言葉を無くした。

「いや、でも俺クビじゃ・・・・」
店長はタカシが全てを喋り切る前に
「寝言は家に帰って寝てから言え。いいからとっとと来い。今日はヨンさんもお休みでこちとら猫の手でも借りたいくらいなんだ。」
「・・・・」
「お前はこんな中途半端な状態で放り投げてすっきりするのか?いいか原因はお互いの中華を愛するが故の行き違いなんだ。確かにそこは譲れない部分もあるが、それ以外の点では私はタダシを評価しているんだ。だから戻って来い。」
「・・・・・タカシですって」
「!!・・・と、とにかく、早く来い。待ってるぞ。お前にしてもらいたい仕事はたんとあるんだ。」

実の所、タカシは名前は間違えられたものの店長の思いもかけぬ言葉が嬉しくて上手く言葉を紡げずにいた。
そして

「わかりました。今から戻ります。でも店長一つだけ言わせてください。」

「やっぱ、酢豚にパイナップルはいらないっすよ。」

そう言って電話を切った後周りを見回し、ふとここにいる人たちの何人かは帰りにうちの店に夕飯でも食いにくるかもなと思った。

そしたら飛び切り美味いチャーハンご馳走してやるよ。

と小さく呟きながらタカシは自転車にまたがり、べダルにかけた足に力を込めた。

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【追記】
こんにちは。
早稲田にあるカフェスペースのある本と雑貨のお店NENOiの店主です。
noteは月1回くらいの更新でいけたらと思っていたのですが、先日『夢中さ、きみに。』という漫画を紹介した際にふと「この本の中に酢豚にパイナップル」という事が出てくるお話を昔店主も書いたなと思い出し、思った以上にあっさりと発掘できたので今回引っ張り出した次第です。2007年5月に書いたもので、写真を撮った際にふと思い浮かんだスケッチのような架空のお話です。
こういう創作も楽しんでいただけるようなら余裕のある時にでもまた投稿します。